初めて在宅ワーカーとして働く際に気になるのが、お仕事開始前の契約についてですね。難しそうだし、種類がたくさんあってわからないという方もいらっしゃるかと思います。
今回は、在宅ワーカーさん向けに契約書についての注意点等をご紹介します。
目次
1.在宅ワークでも契約締結は必要?
契約締結という言葉を聞くと、難しい文章が書かれた契約書を締結するイメージが湧くかもしれませんが、契約を締結するという行為は、口頭でも、メールでも成立します。
しかし、口頭やメールだけであいまいなまま業務を受けてしまうと、上手くいっている時は良いですが、勘違いや行き違いが発生したときに問題が起こってしまいます。
そういう意味では、お仕事を受ける際は、お見積書を出して注文書をもらう、もしくは、契約書を締結するという行為を行うことをおすすめします。
契約書を作成しないときは
お客様が契約書作成を手間だと感じ、書類を出してくれない場合もあるかもしれません。その場合でも各種条件をメールで残すようにしましょう!後で行き違いがあった時に、内容を確認・提示できます。
ポイント
契約は、口頭でもメールでも成立します。
お仕事を受ける際には、各種条件を書面またはメールで残すようにしましょう!
2.見積注文と契約書締結の違い
基本的に見積もり注文と契約書締結には大きな違いがありません。見積注文でも細かい条件を書けば、契約書と同等の効力を発揮します。
ただし、文章量の違いから、契約書締結の方がより細かい事項が定めやすくなっています。
3.業務委託契約とその種類
多くの場合、お客様から業務の実施を任される形になりますので、業務委託契約と呼ばれる契約を締結することになります。
業務委託契約には大きく分けて、「請負契約」と「準委任契約」の2種類の契約が存在します。言葉は難しいですが、それぞれの契約では、約束する内容が異なります。
「請負契約」
いつまでに、何をつくるのか、約束する契約です。
納期や完成したものの品質が悪ければ契約違反になります。
作るものがある程度はっきりしている場合に使われる契約です。
「準委任契約」
どのぐらいの期間で何の業務をどれぐらい行うのか、約束する契約です。
成果物を完成させる責任はありません。しかし、誠実に対応していないと判断された場合は契約違反とされてしまいます。(裁判でもそういった判例があります)
主に作るものがあまりはっきりしていない場合に使われる契約です。
2つを比べると、「準委任契約」は責任が薄く、業務をする側からすると望ましいと感じるかもしれません。
しかし、お客様によっては、この契約を受け入れない企業もありますし、一般的に費用も「請負契約」の方がたくさんもらえます。
4.「請負契約」、「準委任契約」の注意点
「請負契約」、「準委任契約」それぞれでの注意点を、チェックリスト形式でご紹介します。見積注文、契約書締結であれ、必要な項目は明記することを心がけましょう。
「請負契約」8つのチェックリスト
1. | 何を作るのか明確に定められているか? |
---|---|
2. | いつまでに何をどのような形で納品するか定められているか? |
3. | 要望の変更などについての取り決めがあるか? |
4. | 完成したものをいつどのように確認(いわゆる検収)するか定められているか? |
5. | お金の支払条件が記載されているか? |
6. | 契約不適合責任(瑕疵担保)の取り決めはどうなっているか? |
7. | 必要経費の取り扱いがどうなっているか? |
8. | 損害賠償の規定はどうなっているか? |
1.何を作るのか明確に定められているか?
定められていないと作った後で作ったものが思っていたものと違うと言われ、修正をしなければならなくなる可能性が出てきます。
具体的に何をどこまで作る契約なのかはっきりさせるためにも明記しましょう。
なお、設計書などがなく、書類化するのが難しかったとしても、「○年○月○日のメール内容を想定しています」などと記載するだけでも効果があると思います。
2.いつまでに何をどのような形で納品するか定められているか?
納期が具体的にいつなのか、どういう形で納品するのかも明確にしましょう。
たとえばプログラミングのお仕事として、ソースをメールで送ればいいのか、サーバにアップして動作するところまでするのか、納品しなければならないドキュメント(設計書やマニュアル)などがあるのか等です。明記しておけばトラブルを回避しやすくなります。
3.要望の変更などについての取り決めがあるか?
元々想定されていた業務の内容と異なる内容を依頼された場合の対応もできれば書いておきましょう。
何を作るのか明確にした上で、「想定と異なる仕様変更が発生する場合は別途お見積とさせて頂きます」と書くだけでも効果があると思います。
4.完成したものをいつどのように確認(いわゆる検収)するか定められているか?
できあがったはいいが、いつまでたってもお金をもらえないというパターンもあります。
基本的には納品したらその月末か翌月末には検収(お客様が依頼したものがちゃんと完成したと認める行為)してもらえるように明記しましょう。
5.お金の支払条件が記載されているか?
支払条件も注意しましょう。完成したものを納品して、それをお客様が確認した後、いつどのような形でお金を支払うのかという事です。
基本的には銀行振込が良いと思いますので、例えば「検収翌月末銀行振込」といった形が一般的です。ただし、お客様によっては企業側で支払条件が決まっている場合がありますので、確認して受け入れられるかどうか判断しましょう。
6.契約不適合責任(瑕疵担保)の取り決めはどうなっているか?
作って納品したものに後で不具合が発生したときの対応の取り決めです。これは回避することはできません。例えば、電気製品を購入すると保証期間が定められていることと同じです。
「契約不適合責任を負うのは、検収後6ヶ月以内に●●から当該契約不適合を通知された場合に限るものとする」など、期間や範囲を限定できているか確認しましょう。
7.必要経費の取り扱いがどうなっているか?
業務を行うにあたり、高額な備品や設備、ソフトウェアなどが必要になった場合の費用負担も明確に取り決めておきましょう!
最初に決めておけばトラブルは回避できます。
8.損害賠償の規定はどうなっているか?
契約行為が行われる以上、損害賠償をしないという契約はありません。
法人が個人に損害賠償請求する例は稀だとは思いますが、可能であれば、その範囲や上限金額がどうなっているか確認しておいた方が無難です。
「準委任契約」8つのチェックリスト
1. | 準委任契約であることが明記されているか? |
---|---|
2. | 期間が明確に定められているか? |
3. | 業務内容が明記されているか? |
4. | 納品物や納期が明記されていないか? |
5. | お金の支払条件が明確に記載されているか? |
6. | 契約不適合責任(瑕疵担保)の取り決めがされていないか? |
7. | 必要経費の取り扱いがどうなっているか? |
8. | 損害賠償の規定はどうなっているか? |
1.準委任契約であることが明記されているか?
この契約の種類が何なのか、明記しておいた方が良いでしょう。
2.期間が明確に定められているか?
いつからいつまでなのか、どの程度の工数、時間を予定するのか、明記しましょう。
3.業務内容が明記されているか?
何の業務を行うのか、明記されているか確認しましょう。勝手に予想外の業務内容が含まれると困りますよね。
4.納品物や納期が明記されていないか?
納品物や納期が明記されていると「準委任契約」と書いていても実質「請負契約」と判断されてしまうことがあります。
明記しないようにするのがベストです。もしどうしても記載するとすれば、「目標納期」「目標作成物」等という形にして明確に納品を約束しないなど、工夫しましょう!
5.お金の支払条件が明確に記載されているか?
いつ、どのような形でお金が支払われるのか明記されているか確認しましょう。月額でもらうのか、数か月まとめてもらうのか、全て終わってからもらうのか、条件を確認して受け入れられるか検討してみましょう。
例:毎月もらう場合「月末締め、翌月末銀行振込」(たとえば3月の対応分を4月末に振り込んでもらう契約です)など
6.契約不適合責任(瑕疵担保)の取り決めがされていないか?
契約不適合責任(瑕疵担保)の取り決めが記載されていると、「準委任契約」と記載されていても、「請負契約」と判断される場合があります。
書かれている場合は削除してもらいましょう。
7.必要経費の取り扱いがどうなっているか?
こちらは請負契約と同じです。業務を行うにあたり、高額な備品や設備、ソフトウェアなどが必要になった場合の費用負担も明確に取り決めておきましょう!
最初に決めておけばトラブルは回避できます。
8.損害賠償の規定はどうなっているか?
こちらは請負契約と同じです。契約行為が行われる以上、損害賠償をしないという契約はありません。
法人が個人に損害賠償請求する例は稀だとは思いますが、可能であれば、その範囲や上限金額がどうなっているか確認しておいた方が無難です。
5.トラブル回避のためにも、契約書について確認してみましょう
今回は在宅ワーカーさん向けに契約書についての注意点等をご紹介しました。
今回のまとめ
- 在宅ワークでも、メールや契約書などの文面に、契約条件を残しておくと良い
- 業務委託契約には「請負契約」と「準委任契約」の2種類がある
- どの契約形態であっても、しっかりと契約内容を明記することが大切
基本的にこれらの契約内容は、見積注文、契約書締結、どちらでも同じで、トラブルが発生した時に活きてくるものです。
上手くいっていれば気にする必要がありません。そう考えると内容が難しい、調整するのも面倒に感じるかもしれませんが、いざという時の為にどこまで受け入れられるのか、相手への信頼度も加味して一度検討してみてもいいかもしれませんね。